たまごやき
2018/09/09
カウンターに座る常連の男たちが、「たまごやきを作ってくれ(落ち着いたときでいいから)」と注文してきた。
メニューにかいてある、「だし巻きたまご」のことですか?と確認するが、違う、普段家でつくってるやつだ。
ああ、お弁当にいれるような? そうそう。家庭によって味がちがう、あれだ。とニヤニヤしながら男たちが話す。
たみのスタッフの、〜ちゃんと〜ちゃんのはもう食べた。と。生まれが違うから、たまごやきの味付けが違ってよかったらしい。
カウンター越しにじっとみられるので、プレッシャーを感じながらも、お母さんがお弁当にいれてくれたたまごやきを再現できるか試みる。真剣な顔してつくってるのをみて、男たちが、「じゃたにさんは、一つのことしかできないから、声をかけちゃいけないんだ」と男同士で話してるのを聞き流す。
あれこれ、思い出しながら、つくってみたけど、案外できないもんだな、とあきらめながらお皿に盛り付けて出すと、「切ってないんだね。」「甘くない、ごはんに合う感じのやつだ」と、しっかり批評される。
「お箸で切って食べるのが好きでした。」「そう、塩がつよくて、ごはんと食べてました」と、遠い記憶のたまごやきを想像しながら話す。
こうしろ、ああしろ、と言わない。ちいさい違いを愛おしむ常連の男たちは、たみの玄人。
(J)