町を歩くススメ

2015/05/05

温泉はもちろん、町を散歩したり、足湯したり、たみのカフェでぼんやりひなたぼっこをしていると、この町では、わたしたちより30、40、50上の人とすれ違う。車に乗ると早くて出会えないけれど、歩くといろいろ見えてくる。こんにちはと挨拶すると、こんにちはと笑ってかえしてくれる。ゲストが道に迷ったり、お風呂でせっけんをうっかり忘れたりするとそっと手を差し伸べてくれる。
わたしたちがこの町に来たときもそうだったけれど、この町は、ダイレクトでスピーディにお金と交換するのとは別の、気づかれないぐらい静かに、誰かの優しさが経由して寄り添ってくれる。
その回ってきた優しさを誰にお返ししたらいいものか、と、いつも苦労していて、この間その悩みを打ち明けてみたら、「自分が親切にしたことが直接かえってくることを期待してはいけない。親切なことは、人目のないところで行いなさい。」と親から教わった。「どんな日も寝る前に、今日の自分のよかったこと、悪かったことをふりかえって、いただいた優しさに感謝の気持ちを忘れてはいけないよ。」と、80歳目前の方から教えてもらう。地域活性とか町おこしとか社会貢献とか、広い対象ではなくて、もっと個人的でひとりふたりが嬉しい気持ちになる程度の「こっそり」がポイントなんだろう。
こんなことを教えてくれる人、身近になかなかいない。世界はわたしたちの目線とは別に、はるかに大きく流れてることが肌で感じ、不器用でのろまなわたしは安心する。インスタントでコンビニエンスな環境ではないので、その心構えはもちろん必要だけど、気を遣いすぎて1人で完結するよりもまずは、深呼吸しながら町を歩く方が学びは早いし楽しい。こっそりの優しさに触れたときは、その優しさを誰かにこっそり手渡してみよう。自分で身体で行動して、衝突したり、ズレたりしながら、現在レッスン中。(じゃたに)

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